911 Turbo (1973)

1973 Salon de Geneve


1973年、ジュネーブ・ショーに 911のターボ・モデルが展示されました。超極太のレーシング・タイヤを包み込む大きなフェンダー、巨大なリヤ・スポイラーなど、この車が通常の 911でないことは、誰の目にも明らかでしたが、搭載される3リッター・ターボ・エンジンの最高出力は 280馬力、最高速度は 280km/hと発表され、ボディに大きく描かれた「Turbo」のグラフィックとともに、ターボを装備する 911の登場を強烈に印象づけました。この車両はジュネーブ・ショーに引き続き、プロモーションのため世界中で展示され、当時日本にも運ばれてきたのでご覧になった方も多いのではないでしょうか。

1973年のジュネーブ・ショーにライバル・メーカーがターボ・モデルを出品することを知ったポルシェは、当時すでに完成していた 74年市販用 911RS 3.0のプロトタイプ・ボディに通常の 2.7リッターエンジンを搭載し、何と樹脂で作られたターボ・チャージャーのモック・アップを取り付けて急遽この「911ターボ」を完成させたといいます。当時オイル・ショックの影響からスポーツカーの販売が低迷していたにもかかわらず、「911ターボ」には想像以上の予約が舞い込み、早くも翌 74年には、本物のターボ・エンジンを搭載した 911がカタログ・モデルとしてパリ・サロンに展示されました。
ジュネーブ・ショーから約1年、世界各国での展示を終えてドイツに戻ってきたこの「911ターボ」には、最新のレーシング・ユニットである、RSR用の3リッター・エンジンが搭載され、オーストラリアのプライベーターの手に渡り、南半球の地で活躍しました。


この作品はオオタキ(Otaki) 1/24のキットを改造したものです。古いキットなので、ボディ全体に修正を加え、灯火類を含め外装パーツをタミヤの 911ターボから流用して仕上げています。実車に奢られた派手な緑色のカーペットは省略しましたが、タータン・チェックの内装はデカールで表現しています。オオタキからは同じ 911ターボのキットが 1/12スケールでも販売されました。どちらのスケールもドアやエンジン・フードの開閉が可能な良くできたキットで、私のお気に入りのひとつです。 
皮肉なことに、実際には一度もターボ・エンジンが搭載されたことのない「911ターボ」ですが、この車両のボディは翌年には市販されることとなる 74年RS 3.0のプロトタイプそのもので、純粋なレーシング用ユニットであるRSRのエンジンが搭載されていながら、サンルーフまで付いた豪華なフル装備の内装も与えられている希少な一台であることに変わりありません。